この記事は、前回の「岩沼市千年希望の丘交流センター」を訪れた時の記事の続きです。この施設を訪れたことで、ここでは、千年先の未来世界を見通した「千年希望の丘」づくりという地域づくりに取り組んでいることを知りました。そこでいただいたパンフレットには、「千年希望の丘」は、「東日本大震災の悲劇を風化させることなく、鎮魂・記録・希望を感じて未来へつなぐ場所です」と紹介されていました。また、そのための活動として、語り部活動に取り組んでいることも知りました。
東日本大震災を経験し、その悲劇的な出来事に向き合ってきた生活の記憶を千年先の未来世界につなぐ役割を担おうとしているのが語り部という活動です。同じパンフレットに、「千年先まで震災の記録や教訓を伝えるための取り組みを継続していくことが大切です」と記されていました。語り部という活動はその取り組みの中心的なものだと言えるでしょう。しかも、この語り部という活動は今回訪れた施設だけでなく、大震災後誕生したその伝承施設や震災遺構でも実施されている活動です。東北地方全体で、震災の記憶が長く語り継がれる、それは、これからも多くの自然災害と向き合わなければならない日本社会の中でなくてはならない貴重な学びの場となっていくことでしょう。
この「千年希望の丘交流センター」での語り部活動の現状について、岩沼市市民活動センターの情報紙である『なかま』の第28号(2024.3.1発行)が紹介しています。その紹介文によると、この施設の語り部活動は、大震災後の岩沼市による「岩沼震災語り部研究会」を契機として発足しています。当初、そのメンバーは、その研修会参加者から名乗りを上げた3名だったそうです。
そして、「平成28年4月、相野釜公園に千年希望の丘交流センターが開所したことで、県内外から見学者が増え、『語り部ガイド』への依頼も多くなり、語り部現地見学会などを開催して、ボランティアメンバーを募集してきた」のです。その後、新型コロナ騒動などで活動を休止せざるを得ない時期もあったそうですが、現在活動は再開され、メンバーも5名に増えているとのことです。
その「いわぬま震災語り部の会」は、見学者たちに、「そなえよ!つねに」、「自分のいのちは自分で守る」という言葉を伝えることを使命として活動しています。そして、「現在は、見学者のガイド対応だけでなく、会主催の親子防災学習事業なども開催し、震災経験を経験していない世代への伝達活動も推進している」のです。
まさしく、語り部という学びは、交流と体験を通してこれから時として牙をむくことがある自然とどう向き合ったらといか、そして自然との関係でこれからどのように生活して行ったらよいかを学ぶ大切な機会を提供していることをあらためて確認することができました。しかも、この施設での語り部活動をしている会員には、10代や30代の若い会員の方もいると、先に参照した「なかま」という情報紙に紹介されていました。若い世代が語り部活動に参加している、持続的な継承と伝承の活動にとって期待が持てるように感じます。
またその点に関わって、訪問時、そうした伝承活動は「語り部の会」だけでなく、地元の学校教育の中でも取り組まれていることを紹介する展示がされていました。その中には、ある地元の高校生が、他の地域からの修学旅行生を受け入れ、交流する中で大震災の経験を伝える取り組みも紹介されていました。そうした活動がこれからも取り組まれ続けて行くことを期待したいと思います。またそうした活動に未来社会の希望を託したいと思います。
地域文化の旅人(ひ)