大阪・関西万国博覧会が発信しているメッセージを受け止める旅(2)
今回の旅の1日目、幸運にも偶然入館することができたフランス館のあとは、会場が閉まる時間までに入館予約が取れたのは、オーストラリア館だけでした。しかも、その予約時間までは、まだ大分時間がありました。そこで、少し休憩した後、比較的入館しやすいと思われたコモンズ館を訪れてみることにしたのです。思っていた通り、その最初に訪れたコモンズAにすぐに入館することができました。
入館してすぐに気づいたことがあります。それは、コモンズでは、そこに展示ブースを出している各国・地域ごとに、それずれの国または地域づくりの理念が天井からの垂れ幕に掲げられていることでした。まずそれらの垂れ幕から興味を持った理念を掲げているブースに行ってみることにしたのです。その記念すべき最初のブースは、ソロモンのブースでした。

ソロモンが掲げていた言葉は、「幸福の島」です。海と共に暮らしているソロモン諸島の生活の様子や民族衣装などの展示を楽しみました。その次に目に飛び込んできたのは、マザーテレサの大きな写真パネルでした。それは、北マケドニアのブースでした。驚いたことに、この北マケドニアでは、その国づくりのシンボルとして、マザーテレサを前面に打ち出していたのです。戦争の英雄などを国づくりのシンボルにする国なども少なくない中で、マザーテレサを国づくりのシンボルにする北マケドニアとはどのような国なのか、一気に興味が湧いてきました。
その気持ちを察してくれたのか、ブースにいたスタッフの方が北マケドニアのパンフレットとブースに出品していた北マケドニアの製品および産業政策に関するチラシ・パンフレットを手渡してくれたのです。さらに、映像資料を使いながら、万博でアピールしたいところを要約的に解説してくれたのです。今回の旅で、こんなにもスタッフの方と交流できたのは、ただここ北マケドニアのブースだけでした。その交流の中で、感動し、旅からずいぶん経った今でも強い印象として残っていることは、北マケドニアの国づくりの基礎には、マザーテレサの「地球的人道主義」の使命、価値、そして遺産に関する精神が根づいているということをメッセージとして発信しようとしていたことです。とくに、以下の二つの精神を強調していました。

そして、それは、マザーテレサ自身の使命であり、彼女が彼女の人生において示してくれた価値であり、彼女の遺産でもあるのですが、一つ目は、貧しい人の中でも最も貧しい人たちを、排除も無関心に放置することなく、奉仕するということばでした。二つ目は、私たち全てが大きなことを成し遂げることはできませんが、小さなことを大いなる愛情を持って成し遂げることはできるのですということばです。そう言えば、北マケドニアは、多民族・多文化の国なのだそうです。しかし、北マケドニアでは、それを強みに変え、お互いに共存する道を切り開いてきたのだと言います。すなわち、「調和」こそ、北マケドニアの歴史的遺産なのです。そして、その遺産を如何にして現代に生かそうとしているのかを発信すること、それが、北マケドニアブースのやろうとしていることだったのです。
この北マケドニアのブースに出会ったことで、現在世界が直面している危機を解決するためのメッセージを受け取るという視点で見れば、必ずしも人気のパビリオンにこだわらなくても学ぶことができるメッセージに出会えるということを確信することができました。しかも、もしかしたら先進国ではない国・地域の国・地域づくりの理念からも多くのことが学べるのではないかということにも確信が持てたのです。北マケドニアのブースへの出会いに感謝です。
地域文化の旅人(ひ・つ)