大阪・関西万国博覧会が発信しているメッセージを受け止める旅(3)
コモンズDを出た後、訪れたのは、セネガル館でした。それは、行列が無くすぐに入館できたからです。その時は、セネガル館とはどのようなものなのか、全く知りませんでした。セネガル館のメッセージは、「持続可能で公平な開発のために人々を結ぶ交差点」というものでした。そうしたメッセージを発信した背景をぜひ知りたいと思い、展示されているものを見回ったのです。それは、セネガルという国の歴史や自然を紹介する展示となっていました。出口まで来たところで、休息のためのベンチがありそこで少し休むことにしたのです。
そこで、この旅でも強く記憶に残ったメッセージに出会ったのです。それは、休息している部屋の壁に、約10分間隔位で、繰り返し映し出されて映像の中でのメッセージでした。正確ではありませんが、そのメッセージとは、人類が決して忘れてはならない、人間による人間の人権に対する犯罪の記憶というものでした。
では、セネガルの世界遺産ともなっている人類が決して忘れてはならない人間による人権に対する犯罪の記憶とは、どのようなものなのでしょうか。そのメッセージを発信しているその映像とは、セネガルの世界遺産であるゴレ島に関する映像だったのです。ゴレ島は、「アフリカ大陸の西端、セネガル沖約3.5㎞に浮かぶ小さな島です」。ここには、この島が世界遺産となった中心施設である「奴隷の家」という施設があります。

インターネットの情報になりますが、「ゴレ島では、大西洋奴隷貿易の拠点として、アフリカから奴隷が輸送され歴史があります。15世紀から19世紀にかけて、何百万人ものアフリカ人がこの島に集められ、大西洋を渡りアメリカへ運ばれました。この悲しい歴史を伝える場所として」残されてきた施設こそ「奴隷の家」等の諸施設だったのです。セネガル館の出口の所で、繰り返し映し出されていた映像こそ、その「奴隷の家」の内部を含めた映像だったとのです。その映像には、何百人もの人が立ったままでないと収容できないほどの小さな部屋が映し出され、奴隷輸送船に詰め込みされるのを待っていたとのナレーションも流されていたのです。
なるほど、これからの未来の地域および国づくりのための遺産という要素には、人類が決して忘れてはならない記憶、すなわち人間による人権に対する犯罪という記憶というものもあるのだなと強く印象づけられました。セネガル館に感謝です。思えば、現在でもなお、人類が決して忘れてはいけない、人間による人権に対する犯罪の記憶が、残念ながら生み出され続けている現実があることも忘れ去られてはいけないと感じます。本当に残念なことです。
この日の万博訪問で、最後に訪れた所が、オーストラリア館でした。また、このオーストラリア館だけが、今回の訪問で唯一入館予約がとれたパビリオンでした。オーストラリア館で感じたことは、その展示がオーストラリアの自然風景に焦点を当てているのだなということでした。森、川、そして海の姿が映像と立体的な展示で紹介されていたのです。オーストラリア館の展示で印象に残ったのは、映像展示でした。それは、宇宙誕生から始まる過去を振り返る映像展示だったのです。宇宙誕生、地球誕生、そしてオーストラリアの誕生とその後現在に至るまでのオーストラリアの歴史的変貌を、海洋に焦点を当てて紹介していたのです。それは、今回の万博のメッセージとして過去を振り返ることから生まれるメッセージが多いという特徴がありましたが、オーストラリアの映像展示は、そうした中で、最も際立ったものだったのです。では、そうした宇宙史にまで及ぶ過去を振り返ることで、オーストラリアは、どのようなメッセージを発信しようとしていたのでしょうか。

地域文化の旅人(ひ・つ)